2018.11.15
ススキって地味だけど、風流で好きです。穂がサワサワ〜っと風に揺られるのを見ていると、不思議と落ち着いてきます。
毎年秋になると、多摩湖の麓の狭山公園へススキを見に行ったりしていました。ですが、ちょっと物足りない。もっとススキに囲まれてみたい。そんな欲望が心の片隅に数年ほどあったのです。でも、ススキの名所って箱根とかちょっとアクセスし辛くて、なかなか重い腰が上がらない。そんなある日、山歩きの本を読んでいるときに見つけた山中湖近くの「鉄砲木の頭」という一風変わった名前の山。ここは斜面がススキに覆われたまさに理想郷!さっそく行ってみることにしました。
一昨年前に富士五湖1周した際には電車で行ったのですが、今回は運転欲がフツフツしていたタイミングだったので、レンタカー。もちろん後部座先にはブロンプトンを乗っけています。
レンタカーの理由にした一つに「道志みち」を走ってみたいという気持ちがありました。走ったことない道だし、何より2020年の東京五輪のロードレースのコースになっているから!ちょっとした下見も兼ねて実際に車で走ってみようと思ったんです。
…ところが。直前まで来てなんと通行止め!!9月30日の台風の影響で大規模な崩落が発生し、長期間通行不可となっていました…。いや、私がちゃんと下調べしてないのが全面的に悪いんですけどね…ほんと。意味無しの遠回りをして結局国道20号へ出ることになったのでした…。
まぁこういうこともあらぁな!と気を取直して旅路を楽しむことにします。20号は甲府に行く時などに何度か通っていますが、大月あたりから南西へ向かう「富士みち」へ入ります。この道がとても良くて、旧街道っぽい昔ながらの町並みの雰囲気を残す穏やかな道で走っていて飽きません。そしてなにより、だんだんと富士山に近づいていくあのワクワク感。眼の前に富士山が現れるたび「おぉ」と思わず声を上げてしまう。日本人の性でしょうか。
山中湖に近づいてくると、以前富士五湖一周で走った場所を進みます。懐かしさを感じつつ、「よく走ったなぁ」と過去の自分に賛辞を贈りたくなる。
山中湖の東端から県道730号に入るとどんどん高度が上がっていき、少し登ると一体がススキに覆われた斜面が広がっています。「山中湖パノラマ台」には数台分の駐車スペースがありますが、ススキの見頃だからかいっぱい!でも運良く一台だけ出ていったので、駐車することができました。その後もひっきりなしに車がやってきて、駐車スペース以外にも車が停まっているような状態に。正直、こんなに人が居るとは思っていなかったのでびっくりです。とはいえ、ドライブがてら立ち寄って写真を撮ったらすぐその場を後にするグループの方が多く、回転は早いようです。
「パノラマ台」の名に恥じぬ、山中湖と富士山の雄大な景色を望めます。そしてこの季節だけしか見られない一面のススキたち。
駐車場の奥に鉄砲木の頭へ登る山道があったのでちょっとだけ登ってみました。とはいえこの日は山登りスタイルではなかったので、行けるところまで。一応靴だけトレッキングシューズですが。
最初はゆるやかな斜面と階段が続き、歩きやすい道です。左右をススキに覆われているので、なんだか自分が小さくなって探検しているような気分でワクワクします。しばらく進むと、だんだんと足場が悪くなり、元は階段であったであろう崩れた段差に苦戦します。一段一段が高いので膝に負担がかかりそう。これ、帰りが怖いな〜と思いつつも時折振り返っては山中湖と富士山を確認しては、もう少しだけと徐々に登っていきます。
ゆっくりゆっくり足場を確認しながら登っていて、序盤で軽々抜いていった山慣れた男性のオレンジ色の背中が遠くの方に豆粒くらいの大きさでちらりとみえていました。流石にあそこまでは行けそうもないな、と諦めてほんの少しだけ開けたところで休憩します。視界には空と富士山と山中湖とススキだけ。賑わっていた駐車場の音もここまでは聞こえてきません。さわさわさわ…とススキが揺れる音だけ。時折遠くの方で登山者の鈴の音や話し声が聞こえてきますがススキに覆われていて姿は見えません。そうした音を聞いていると、自分だけどこか違う次元に来たような錯覚に陥ってきます。
しばらくそこでぼーっとした後、来た道を戻ります。やっぱり下りの方が怖くて、一歩一歩慎重に、時には思い切りよく降りていきます。途中、老夫婦とすれ違い「この先はなにかありますか?」と聞かれたのですが、奥さんの方が杖を持っていたのでこれ以上は危険だろうなと思い「この後は足場がかなり悪くなるので、無理なさらず」と答えました。「もう少しだけ登ってみようか」とご夫婦はまた先へ行かれました。こういうとき、この場所を熟知した経験豊富なガイドだったらなんて答えるのだろう。とついつい考えてしまいます。ご夫婦が怪我なく、良い景色を見れたことを祈ります。
一番の目的であったススキを見た後は、山中湖のほとりへ向かいます。山中湖畔にはいくつか無料の駐車場があるのですが、個人的には西側の駐車場がおすすめ。というのも、自転車で湖を一周するなら反時計回りが鉄則ですが(左側通行なので湖が近くに見られるため)、サイクリングロードが整備されておらず富士山にも背を向けることになる湖南よりも、走りやすいサイクリングロードが整備されている上富士山が目の前に広がる絶景を見られる湖北側を走って最後に見ながらゴールするほうが旅の締め的に気持ちがいいかな〜というそんな理由です。
山中湖は1周14km。アップダウンもほとんどなく、走りやすい最高のサイクリングが楽しめます。先程も説明したとおり、湖北と湖南では風景がガラリと変わるのも面白いところ。今の所好きなサイクリングロード第1位かもしれません。山中湖は2回目ですが、本当に気持ちが良くて、そのまま2周目に突入してしまいそうになるほど。
道志みちも通れていないし、また近い内に山中湖1周したいです。秋と冬しか訪れたことがないので、次は春夏に行きたいですね。