素朴なまち山梨市で景色と歴史の気ままポタ

ポタリング

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あとから振り返って、当たりの旅だったなと思う旅ができると嬉しくなります。ろくに下調べもせずふらっと行ったまちで好きなものと出会えた時がとくに記憶に残るのです。
今回は山梨市へ。山梨へは何度か来ていることもあって、あたかも地元に戻ってきたかのような気持ちで旅をスタートさせました。

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なんとなく、地図上でよくみる「フルーツ公園」に行ってみることに。なんだかとっても美味しそうな名前だし。ルートもよくわからないため、それっぽい方向に進んでいると、いつのまにかぶどう畑の真ん中に迷い込んでいました。
こんな場所通って良いのだろうか…?と不安になりながらも、どこかワクワクとした冒険気分。異国に来たような気持ちになります。
そういえば、前「勝沼はフランスみたい」という話を書きましたが、あとで調べると旧勝沼町はフランスのボーヌ市(ブルゴーニュワインの産地)と姉妹都市でした。

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観光客は絶対に通らないであろう道を進むと、フルーツラインというこれまた美味しそうな農道にでました。結構な坂道でキツかったですが、景色もよく、路面状況も良いので気持ちが良い。

笛吹川フルーツ公園

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息を切らせながら到着した「笛吹川フルーツ公園」。新日本三大夜景のひとつとされているらしく、どうりで高い場所にあるわけですね。夜景でなくとも、甲府盆地が見渡せて清々しい。

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フルーツ公園という名前ですが別に色んな種類のフルーツ狩りができるわけではありません。フルーツ感はとくにないけど、強いて言うならば「くだもの館」という、くだものの歴史を学べる施設があります。あとは広場があったり、アスレチックがあったり、温泉があったり、ホテルもあったりで、主に家族連れが遊びに来るところのようです。

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フルーツ公園から市街地へ戻る途中、「名前のない展望台」という場所がありました。なんだか名前はおしゃれな雰囲気漂いまくってますが、手作り感満載の普通の広場です。名に恥じない景色が広がっています。これは誰がつくったのでしょう。何にせよ、粋なはからいですね。

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下まで降りてきて、迷子を楽しみながら走っていると、笛吹川までやってきました。サイクリングロードのようなものがあったので、適当にINしてみます。
少し走ると、「根津記念館」の案内を発見。根津記念館とは…?と何にもわからないまま、行ってみることに。

根津記念館

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「根津記念館」は鉄道王と呼ばれた根津嘉一郎の実家を記念館として公開している施設。と言われても、正直よくわかりません。どうやら、東武鉄道の社長をはじめとして、その他24の鉄道会社と資本関係があり社長を多く努めたことで、鉄道王と呼ばれていたらしいです。「おぉ、それは流石にすごいな。でもまぁ要するにお金持ちの家か」と興味半分で見学を進めます。

「根津喜一郎は、若い頃から古美術品に関心を寄せていた」という項目に、「もしかして」とこの時はじめてぐぐっと興味を示すことになりました。そう、この方、東京は青山の「根津美術館」の根津さんだったのです。

ずっと台東区の根津にあると思っていた根津美術館が青山にあると知った時、「なんでやねん!」と思わずツッコミをいれていました。その時はなんで根津なのかということは、放置していましたが、そのご本人の実家に知らず知らず訪れていたとは。点と点が線で繋がったような感覚です。

こんなことは少し調べればすぐに分かりますが、記憶の片隅に置いておいた疑問が急に繋がると、少なからず衝撃があります。そして、自分の足で得た知識はもう忘れません。これが迷子旅の醍醐味なのです。

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根津記念館の休憩所兼事務所で、他に面白いところがあるかを聞いてみると、親切に色々と教えてくれました。どうにも若めな女ということもあってか、正直好みのところが出てこなくて少し困らせてしまいましたが、寺や神社系でリクエストをしたところ、「やまなしのお寺と神社」という冊子をいただきました。山梨県全域の歴史ある神社仏閣が紹介されていて、119頁もある立派な冊子です。これを無料でいただいてしまって良いのかと驚きましたが、少し前に一般にも少量配っていたものらしいです。

この冊子をもとに、次の行き先を決めることにしました。笛吹・甲州・山梨エリアの項に、桜に包まれるようにして建つ、横に長い珍しいかたちの流造の神社があるのをみつけ、ここに行ってみることに。東山梨駅の北西に位置する「大井俣窪八幡神社」です。

大井俣窪八幡神社

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雁坂みちを曲がると突如として現れる鳥居に目を奪われました。見るからに歴史深く、威厳に溢れたその姿に胸の高まりがとまりません。一気に近づくのが惜しくなって、ペダルを漕ぐ足もゆっくりになってしまいます。
木造の鳥居としては、日本最古のもの。室町時代頃に作られたものだそうです。鳥居の中では両部鳥居が一番好きだし、素材としては木造が一番好き。両方を兼ね備えた上、日本最古とは、どれだけ鷲掴みにしてくるのだろう。

しばらくの間、目を輝かせながら口も半開きで鳥居を見上げる変人になっていました。
ハッと我に返り、まだこれからが本番だった、と思い直し参道を先へ進みます。

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「大井俣窪八幡神社」は、清和天皇の勅願により創建され、武田信玄もたびたび戦勝祈願に訪れていたという由緒ある神社です。
間口が11間の横長の拝殿。左右対称ではなく、床が低い点などが拝殿としては特異なのだそう。
境内全体がシャンとした空気に包まれ、廃れずに長い間信仰されてきたのだろうと伺えます。観光地化せずに、地元民の日常の中で大切にされている神社の方が好きです。

清白寺

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「大井俣窪八幡神社」の他にもう一つ、同じ頁に載っていて、見たい!と思ったのが「清白寺の仏殿」。仏教建築様式のなかでも「禅宗様」が特に好きで、東村山市の「正福寺地蔵堂」などはたまに見に行ったりします。屋根のクイッとした曲がり具合がなんともそそられるのです。その美しい禅宗様の仏殿が清白寺にもあります。
清白寺は、1333年夢窓国師の開山、足利尊氏の開基と伝えられています。仏殿は、こぢんまりとしていますが、大規模な仏殿をそのまま小さくしたような精密さがあります。ミニチュアをみているようでおもしろいです。

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最寄り駅は東山梨ですが、ここは無人駅。国宝の美しい仏殿があるとは思えないようなのどかな風景がひろがっています。いや、のどかだからこそ、この仏殿は残ったのかもしれないですね。

先の「大井俣窪八幡神社」もそうでしたが、「清白寺」も人っ子一人いない。猫があくびをしているくらい。国宝とか、日本最古とかキャッチーなようにも思えますが、ほどよくスルーされている感じが好ましい。

何も決めていなかった割には、充実感満点の旅になりました。こういう時、自分の嗅覚を自負して心地よい満足感に包まれるのです。